鈴木秀夫『気候の変化が言葉をかえた』NHKブックス pp.160-161

 ヨーロッパの10世紀は、まだ侵略者の力が強かったが、955年にはハンガリー騎兵による略奪は阻止される。
 ノルマン人はまだ力があり1030年ころ南イタリアに上陸し、これに対してローマ教皇がビザンツ帝国と結んでおさえようとしたが失敗、その過程で両者の反目が表面化し、1054年、互いに破門をするという事態にいたる。
 もうひとつのヨーロッパへの侵入者はアラビア人であったが、11世紀の初頭には、イベリア半島で軍事的優位を失う。アラビア人とマジャール人による侵略が終わると、西欧世界の拡大が行なわれる。1050~1300年の大開墾時代は、高温に助けられたものと考えられ、ドイツ人の東方植民が行なわれる。ドイツ人の東進はその東にいたスラブ人の東進でもあり、これはかつて寒冷化によってドイツ人がいなくなったところへスラブ人が入ってきたのとは違って、ドイツ人が攻撃をしかけている。1000年ころ、スラブ諸語の最終的な方言分裂が行なわれたということであるが、このような移動にかかわりがあるのかも知れない。
 11世紀から13世紀にかけての人口の増加はスペインでも顕著で、言語にかかわることを述べると、このころラテン語が後退しロマンス諸語に分かれる。地中海地域は西欧のキリスト教によって再征服され、やがて1096~1099年の第一回十字軍となる。

気候の変化が言葉をかえた―言語年代学によるアプローチ (NHKブックス)

蟹澤聰史『石と人間の歴史』中公新書 p.76

 デルポイは地震の多い地域にある。実際、多くの建物が地震で破壊された。デルポイには、ギリシア最古の神託所があった。アポロン神殿の神託は、地の深い亀裂から響いてくる意味不明の託宣を巫女が聞き唱え、それを神職者たちが解釈したものだという。付近を通る断層から流出したメタン、エタン、エチレンなどの軽い炭化水素を吸い、恍惚状態になって発した叫びが巫女の託宣であるという説が浮上している。

石と人間の歴史―地の恵みと文化 (中公新書)

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