中村元『古代インド』講談社学術文庫 p.360

 インドでは、5世紀中葉に西北方から匈奴(サンスクリットでフーナ Huna)が侵入してきて、455年にはインドの統一政権を形成していたグプタ王朝の国家を攻撃している。グプタ朝はインド史上においてもっとも強大な中央集権的政権を確立していたのであったが、480年以降はさしも栄華をほこったこの王朝もしだいに衰え、500年ごろには匈奴王トーラマーナ(Toramana)がインドで即位し、あと約半世紀ほどは、西インドのマールワー(Malwa)の支配がつづいている。
 その後インドではハルシャ王(7世紀前半)がかなり広範囲にわたってインドを統一したが、彼の没後、インドはまったく四分五裂の状態におちいり、インド最初のイスラーム教主クトゥブッディーン・アイバク(Kutub uddin Aibak)が1206年に北部インドを統一するまでは、そのままの政治的混乱状態がつづいていた(西洋では、ほぼ同時代に、同じく匈奴の長アッチラが441年にドナウ川をわたり、さらに452年にイタリアに侵入し、476年にはにしローマ帝国が滅亡している)。

古代インド (講談社学術文庫)

関連記事s