フランスの場合、同時代のドイツとは異なり、社会主義者や労働組合の統合が実現しなかった。むしろ、19世紀終盤のフランスでは、統一的な社会主義団体の成立どころか、いくつもの左派勢力が林立していたのである。とはいえ、1880年前後から同国の社会主義運動や労働運動が活性化したことは事実であり、その重要性を過小評価してはならない。そんな折、1883年に盟友マルクスを失ったエンゲルスは、第一インターナショナルを後継する組織の設立を模索していた。こうした中で、1889年7月、フランス革命百周年に合わせた社会主義者の国際大会が、首都パリで挙行されることになったのである。
社会主義の誤解を解く (光文社新書)