杉田米行『知っておきたいアメリカ意外史』集英社新書 pp.158-159

 ここで、ルイジアナの歴史を少し振り返ってみよう。
17世紀後半、この地を最初に探検したフランス人一行が、当時のフランス王ルイ14世にちなんで「ルイジアナ」と命名し、それ以後、フランスが領有することになった。そして、「フレンチ・アンド・インディアン戦争」でフランスがイギリスに敗北すると、その領有権はスペインに移った。
 しかしルイジアナの統治は、スペインの財政を圧迫し、さらにこの地に移住してくるアメリカ人との衝突の可能性も高くなったために、スペインは1800年、秘密裏にフランスにルイジアナを返却していたのである。
 その一方でこの時期、アメリカの大統領トーマス・ジェファーソンは、メキシコ湾とミシシッピー川の接点に位置する交通の要衝だったニューオリンズという小都市を、アメリカに譲ってほしいとフランスに申し込んだ。
 これに対してフランスからは、ニューオリンズだけでなく、広大なルイジアナの土地すべてを購入してほしいという意外な回答が返ってきたのだ。
 当時のフランスは、カリブ海のハイチにおける黒人奴隷反乱の鎮圧に失敗し、さらにヨーロッパにあっては、イギリス、ロシア、プロイセンなどとの間で、ヨーロッパの支配をめぐって「ナポレオン戦争」(1799~1815年)を繰り広げていた。そのため、喫緊に軍事費が必要で、安値でもルイジアナを処分できればありがたいと考えていたのである。

知っておきたいアメリカ意外史 (集英社新書)

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