終末の日がいつか、占星術や聖書解釈学が必死に計算を続けていた。だがエルサレムへの巡礼は、実は救済にあずかる喜びよりも、むしろ恐怖をバネとしていた。罪あるままに世界の終末を迎えるならば、「火と硫黄の燃える池」で「第二の死」(「ヨハネの黙示録」第21章)を迎えるに違いない。それを避けるには贖罪が必要と考えられた。贖罪への強い思いが、人々をエルサレムへと向けた。エルサレムへの巡礼は、贖罪の重要な一形態だった。
ウルバヌス2世の十字軍は、この巡礼という贖罪の旅に、さらに大きなものを付加した。参加を誓約することによって与えられる贖罪である。
これは新しい贖罪の形式だった。
十字軍の思想 (ちくま新書)