スマトラ島におけるイスラームの伝播は、当然対岸のマレー半島にも影響をおよぼした。この半島の西海岸にマラッカ王国が建設されるのは、14世紀末のことで、ちょうど中国では、明の永楽帝が積極的な対外政策をとっていた時代であった。マラッカ王国の建設者パラメスワラはこの明の対外政策を背景に、その保護のもとに建国をなしとげるのである。
パラメスワラは永楽3年(1405年)、永楽帝によって派遣された使節内官尹慶らにしたがって、はじめて使節を明に派遣する。永楽7年(1409年)永楽帝は正使太監鄭和に命じてマラッカに詔勅をもたらし、パラメスワラに銀印、冠帯、袍服をあたえ、彼を国王に任じた。このように、マラッカは明の政治的な庇護のもとに建国をする。パラメスワラ自身、1411年には鄭和の艦隊とともに明を訪れている。
パクス・イスラミカの世紀 (講談社現代新書―新書イスラームの世界史)