宗教戦争に明け暮れ、ペストや大火の被害をまともにうけた17世紀が終りを迎え、やがて18世紀へ入ってゆくと、ヨーロッパ全体が明るくなっていったような印象を受ける。古気候学という学問が進むにつれて、16世紀後半から17世紀にかけての時代が、これまでにないほどの寒さに襲われ、降水量が多かったため、穀物の生産が最悪のレヴェルにまで落ち込んでいたことが明らかになった。しかし18世紀が近づいた頃から天候も回復し、穀物生産も向上して、人口が増えてゆく。森の樹木が大々的に伐採されて湿度が減り、爽やかな明るい時代がやってくるのである(もちろん18世紀にも天候の悪い時期があり、1709年から10年、1713年から14年、1727年から28年などは天候も悪く、不作であった)。そして17世紀前半のような宗教戦争の嵐が静まって、理性を基調とした精神風土が展開される。
コーヒー・ハウス (講談社学術文庫)