加藤雅彦『ライン河』岩波新書 p.177

 19世紀に始まった工業化でもフランスはドイツに遅れをとった。フランスは、イギリスやドイツのような急テンポの産業革命を経験しなかったが、これは担い手となるべきプロテスタントを欠いたことがその一因であった(たとえばフランス人新教徒の技術者デニ・パパンは、亡命先のドイツで蒸気ピストンを考案した)。一方、統一後のドイツの経済発展はめざましかった。人口の都市集中とあいまって、ドイツの工業化はフランスよりも急激な勢いで進んだ。1875年ドイツでは、人口の六割は農村居住者であったが、早くもその8年後には都市生活者が農村を上回った。だが農業大国のフランスでは、都市人口が農村人口を超えたのは、ようやく1931年になってからのことであった。

ライン河―ヨーロッパ史の動脈 (岩波新書)

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