中西進『古代往還』中公新書 pp.249-250

 中央アジアにはカラ(khara/kara)という接頭語をつけた地名が多い。カラコルム山脈、カラホト、カラクム砂漠のように。またカラハン王朝といったたぐいである。
 このカラは黒を意味するが、さてその黒について、アンカラ大学の東洋学者オトカン教授は「黒は北、紅は南、白は西」のことだといった。だから北の海が黒海で、紅海は南にある、と。
 そもそもカラはモンゴル語とかトルコ語とかと考えられているが、本来アルタイ系語族に属している。それはトルコへひろがったと同時に朝鮮半島経由で日本に入ってきたはずだ。――そう服部さんは考える。
 そこで話が俄然おもしろくなる。このカラが朝鮮、中国をいうときのカラだというのである。
 カラは黒で北方を意味する。すると「天子南面」の思想とひとしく、天子は北にいるから、カラは宇宙の中心でもある――これも服部さんの意見だ。

古代往還―文化の普遍に出会う (中公新書)

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