高階秀爾『フィレンツェ』中公新書 p.177

 しかしそれにもかかわらず、中世末期から15世紀にかけて、古代の思想家や詩人たちの作品が広く求められるようになり、急速に古代思想が復活してきたことは、この時代の文化を大きく特徴づけている。特に、トルコの進出によって東方世界からイタリア半島に逃れてきた学者や修道僧たちが、アレキサンドリアを通じて東方世界に伝えられていたギリシアやローマの文献を大量にもたらしたことと、15世紀の後半に新たに登場した印刷術によって、それらの貴重な遺産が安易に復刻できるようになったことは、この時代の精神的風土に強く古代的色彩を与えた。

フィレンツェ―初期ルネサンス美術の運命 (中公新書 (118))

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