宮崎市定『大唐帝国』河出文庫 pp.36-37

 本籍地から逃亡して他郷へ出れば、もう政府の保護は受けられなくなる。籍ももたず、所有地もない流浪の身となったので「客」と呼ばれる。かれらは比較的大きな都市にはいって日やとい人夫となるか、でなければ荘園へはいってそこで隷農として働く。いわば身売りをしたようなもので、もともと本来はりっぱな自由民であるが、一家とともに荘園所有者に隷属してしまうのである。
 この経路は、ローマ時代にあらわれたコロナトス(Colonatus)とまったく同じものである。ここに自由民でもない、奴隷でもない、その中間に位する賤民階級の発生をみたのである。これが唐代の法制に規定された「部曲」なる隷民の期限である。

世界の歴史〈7〉大唐帝国 (河出文庫)

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