藤沢道郎『物語 イタリアの歴史』中公新書 p.57

内外の強烈な刺激と急速な変動によって西欧社会が根底から揺り動かされないはずはない。12世紀は西欧キリスト教世界の深刻な危機の世紀でもあった。新興都市ブルジョアジーの利害は至るところで封建的諸制約と衝突し、それらの制約の守護者であり受益者である貴族階級に対する闘争は急速に激化した。トスカーナ伯のような領主がカノッサのような山の城から都市を含む自領全体を睥睨し、その領民を保護すると同時に支配するという、従来の安定した統治のパターンは現実に合わなくなった。都市は自治を宣言し、それを強圧しようとすれば武力で逆襲するだけの力をすでに備えていた。危機を感じた領主階級が皇帝権を振りかざせば、都市は同盟して教皇権を後楯とする。こうして赤髭皇帝フリードリヒ1世対ロンバルディーア自治都市連盟の戦争が始まった。

物語イタリアの歴史―解体から統一まで (中公新書)

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