藤沢道郎『物語 イタリアの歴史』中公新書 p.70

ドメニコ会の規約はフランチェスコ会と同じく「完全な清貧」を基礎とするものであった。ただドメニコはフランチェスコのように精神的・知的な豊かさをも軽蔑したわけではなく、フランチェスコのように神学に無知でもなかった。彼は学問や理論の重要性を認めており、彼自身は学者ではなかったが、後にドメニコ会からトマス・アクイナス始め学識深い修道士が続出する基礎を作った。だがこの時期には、フランチェスコもドメニコも同じ戦線に立っていたのである。教皇イノケンティウスの期待は見事に満たされた。これら「正統の聖者」たちがいる以上、異端諸派は己の同義的優位を誇ることはできず、その民衆的基盤はカトリック側に奪回された。

物語イタリアの歴史―解体から統一まで (中公新書)

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