菊池良生『神聖ローマ帝国』講談社現代新書 p.236

 1700年11月16日というスペイン継承戦争前夜に皇帝レオポルトとブランデンブルク選帝侯フリードリッヒ3世との間でいわゆる王冠条約があわただしく調印された。それによるとブランデンブルクは戦端が開かれれば直ちに皇帝に八千の軍隊を提供する。その代わり皇帝は選帝侯がプロイセン王を名乗ることを承認する、とある。
 プロイセンとはスラヴの一支族の定住地であり、帝国には属さない地方である。そして当時はブランデンブルク選帝侯国の主権的領地となっていた。そこで、選帝侯フリードリッヒ3世がブランデンブルク王となるのはまずいが、プロイセン王になるのは一向に構わぬということになる。
 むろんこれは単なる言葉のすり替えに過ぎず、実質的にはベルリンを王都とするブランデンブルク王国の誕生である。

神聖ローマ帝国 (講談社現代新書)

関連記事s