遅塚忠躬『フランス革命』岩波ジュニア文庫 pp.88-89

 いちばん右に貴族がいます。貴族は、89年以後には二つに分裂します。すなわち、多数の保守的貴族は、革命そのものに反対する反革命派になり、少数の(だが有力な)自由主義貴族は、ブルジョワと同盟して、いわば妥協的な改革で革命を終わらせようとします。
 いちばん左には民衆と農民がいます。この大衆の運動は、さきに67頁で見たように、旧体制の徹底的打破を求めると同時に、資本主義の発展に反対するという、二つの側面をもっています。したがって、彼らは、旧体制打破の側面ではブルジョワと同盟できますが、資本主義反対の側面ではブルジョワと対立しています。
 そこで、中央にいるブルジョワは、自由主義貴族と同盟して(大衆と手を切って)妥協的改革の道を選ぶか、それとも、大衆と同盟して(貴族と手を切って)徹底的革命の道を選ぶか、まことにむずかしい選択を迫られます。劇薬を飲まずに大衆と手を切れば、保守的貴族の反革命運動に対抗することが困難になりますが、劇薬を飲んで大衆と同盟すれば、その反資本主義的な要求にどう対処するのかが大問題になります。

フランス革命―歴史における劇薬 (岩波ジュニア新書)

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