後藤健生『サッカーの世紀』文春文庫 p.52

 フットボールは、労働者に一つの抽象的な目的、つまり生産(またはゴール)のために、一定の規律の下で自らを犠牲にして労働(またはプレー)することを教育する手段となると同時に、生活の不満から彼らの目をそらし、新しく生まれた地域(都市=工業地域)への一体感を持たせることもできる。そのため、資本家たちは労働者がフットボールをプレーする、あるいはプロの試合を観戦するための環境の整備に資本の一部を割くことに同意したのだ。
 こうして、アソシエーション式フットボール(サッカー)は労働者階級のスポーツとみなされるようになり、首都ロンドンをはじめ、織物産業や金属産業、あるいは炭鉱地帯であるイングランド中部、北部の新興都市、バーミンガム、リバプール、マンチェスター、シェフィールド、ニューキャッスル、サンダーランドなどに、次々とフットボールクラブが生まれ、それらのクラブがプロ化し、イングランドのプロ・リーグは大きく育っていったのである。

サッカーの世紀 (文春文庫)

関連記事s