川北稔『砂糖の世界史』岩波ジュニア新書 p.62

 砂糖をほとんど万能の薬品とする考え方は、アラビアから主に十字軍によってもたらされたと思われますが、多くの人々が慢性的に栄養不良の状態にあった時代ですから、カロリーの高い砂糖は、どんな場合にも、即効性のある薬品となりえたのかもしれません。アラビアでは、すでに11世紀の偉大な医学者アヴィセンナ(イブン・スィーナー)が「砂糖菓子こそは、万能薬である」と断言していましたが、この人物が著した医学書は、少なくとも17世紀までは、ヨーロッパの薬学の世界でも最高の権威とされたものでした。

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

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