鹿島茂『ナポレオン フーシェ タレーラン』講談社学術文庫 pp.274-275

 ナポレオンはイギリス本土侵攻の決意を固め、軍費調達のために、アミアン条約でイギリスから返還された植民地ルイジアナをアメリカに売却したり、上陸用舟艇を大量に建造させたりして、ブローニュに11万の大軍を集結させたが、わずか40数キロの距離にもかかわらずドーヴァー海峡は、熱狂情念だけでは超えられなかった。圧倒的に優勢なイギリス艦隊が行く手に塞がっていたのである。海上に出たとたん、侵攻部隊は、ドーヴァーの藻くずと消える危険性さえあった。
地団駄踏んだナポレオンは、イギリスとその植民地からの商品を閉めだす大陸封鎖例を出し、イギリスを経済的に締め上げようとしたが、海外に販路を多くもつイギリスにはこの措置もたいした影響をおよぼさなかった。

ナポレオン フーシェ タレーラン 情念戦争1789―1815 (講談社学術文庫)

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