高谷好一『多文明世界の構図』中公新書 pp.106-107

 トルコ世界がシリア・イラク世界やエジプト世界に比べて周辺的、混交的であったということは、その歴史からも考えられる。イスラーム世界の拡大は実は二回行われている。シリア・イラク世界から広がったイスラーム世界は8世紀中頃までには西はアフリカ北岸から、東はイランにまで広がり、ここで一度足踏みをしている。そして13、4世紀にもう一度大きな拡大をするのである。
 この第二次拡大はモンゴル・トルコ族の軍事的拡大と軌を一にしている。この時に、イスラームは本拠の砂漠地帯から離れて、草原やサバンナ地帯に広がった。さらに海を越えて、東南アジア方面にも広がった。モンゴル・トルコ族の軍事的拡大は、同時にモンゴル・トルコによる治安の維持をもたらしたのだが、その傘の下に入って、イスラーム文化・商業圏とでもいったものが拡大したのである。トルコ世界はこの第二回目の拡大時にイスラーム文化圏に組み入れられたのである。

多文明世界の構図―超近代の基本的論理を考える (中公新書)

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