山辺規子『ノルマン騎士の地中海興亡史』白水Uブックス pp.87-88

 ノルマン人の勝利は、決定的だった。ノルマン人の不敗神話が話題になるようになった。チヴィターテの戦いは、彼らの南イタリアにおける優位を動かしがたいものとしたのである。また、この戦いは、ヨーロッパ史上有名な事件とつながった。世にいう東西教会の分裂である。レオ9世はビザンツの援軍が戦いに加わらなかったことを不満に思っていた。一方、ノルマン人が征服した旧ビザンツ領において、ローマ・カトリックの典礼がおこなわれるようになったことが、ビザンツ側の避難の的となった。教皇側とビザンツ側の交渉団は、お互いに敵意を丸出しにし、交渉は決裂した。これをもって「東西教会の分裂」という。実のところ、以前から東西教会は性格を異にしてきていた。また、この後も両者の間には何度も交渉がおこなわれるので、1054年の交渉決裂は象徴的なものにすぎなかったともいえる。ただ、ノルマン人にとっては、ますます事態は有利になった。ビザンツ領を征服することが、ローマ教会の典礼を広げる、つまり教皇の権威を増すことにつながるため、ローマ教会の支持を得ることになったためである。

ノルマン騎士の地中海興亡史 (白水uブックス)

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