つまり、他の国が宗教戦争に力を注いでいるのに、オランダはそれとはほとんど関係しなくてもよかったのだから、その経済力を容易に伸ばすことができた。イギリスも三十年戦争には加わらなかったが、清教徒革命(1649年)の時期で、国内が混乱していた。三十年戦争はやがて終わり、そのときにオランダの独立は法的なものになるのだが、実はそれがオランダの隆盛の終わりの始まりだった。というのは、ヨーロッパ諸国は宗教戦争の愚を悟って戦うのをやめ、自国の発展を志すようになったからで、そうなるとオランダのように人口も小さく、国土も狭い国は次第に追い着かれ、他のいくつかの国の大きさに圧倒されてしまう。
世界史の中から考える (新潮選書)