松田壽男『アジアの歴史』岩波現代文庫 pp.34-35

 ところが、前近代のアジアでは、むしろ内陸アジアを中間に置く東西の関係が中核となる。その部分だけを抽出すれば、図5のように描かれる。つまり、オアシス世界(西アジア・中央アジア)というクサビが、華北の黄土地帯に強く接触している形であるが、その接点に敦煌が位すると受取って誤らないであろう。また華北の黄土地帯(黄河流域)は、寡雨の半砂漠で、その生活は、後述のように、オアシス作りから発足している。したがって、ここに描いた図は、アジア大陸の中央部を東西に貫くオアシス地帯を表示したものともいえる。そしてこの地帯こそは、アジア文化の起源であり、アジア農耕社会の発祥地として見のがすことができない。

アジアの歴史―東西交渉からみた前近代の世界像 (岩波現代文庫)

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