アントウェルペンはオランダ語読みで、英語ではアントワープ、現在のベルギーのアンヴェルスだが、当時はハプスブルク・スペイン領であった。カルロス1世=カール5世が生まれたガン(現在のヘント)を流れるスヘルデ河の河口にある港町である。
16世紀にこの町が世界経済の中心地になったのは、ヨーロッパの南北の商業圏の接点であったからだけではない。当時、ヨーロッパの銀生産の中心地でもあったから、カルロスが皇帝冠を買収するについて多大な投資をした、金融家フッガー家の繁栄にあった南ドイツと、南ヨーロッパ、就中、イベリア半島との仲立ちの場であったからだ。
この町の繁栄を支えていた三本柱は、毛織物産業とインドのスパイス、南ドイツの銀と銅であった。イギリスの毛織物はここで高級品に仕立てあげられ、各地に送られた。
海の世界史 (講談社現代新書)